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カレイドスコォプ-6
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「だ〜か〜ら、てめー相手は骨が折れるつってんの俺は。」
ベッドの上、室内から窓の外へ、ゆるりと流れる一筋の紫煙。
「ヨさそうにしてたくせに何云ってやがる。腹もふくれただろうが。」
「イき過ぎて頭パンクするかと思ったわ。」
「最上級の褒めコトバだな。」
「出て行け!」
「――っと、」
至近距離から銀時が枕を投げつけた。
とんでもないスピードで向かって来た枕を、ボスッとこもったと音をたてただけで、あっさり高杉は受け止める。
「銀時ィ、」
「んあ?」
そっと腕を掴んで引き寄せた。
耳朶にそっと口吻けて、ぺろりと舐めあげる。
「……っん、だよ?」
「ようやく、」
高杉が片腕だけで、きゅ、と銀時を抱き締めて呟いた。
「俺の匂いだけになった。」
「……ああ、あんだけされたらそりゃぁ……ね。」
「結局てめェは、何で俺以外の野郎の処に行った?」
「……もうイイだろソレ。」
「よくねェんだよ。」
「――――っのわ!?」
先程までの穏やかさはどこへやら。
高杉は思い出したかのように露骨な不機嫌さで、銀時をベッドの上に押さえつけた。
「赦した訳じゃねェからな。答えてもらうぞ。」
「いや、答えられなくしたのどこのどいつだよ?」
「ウルセェ。」
押さえつける腕に力が入る。
「答えろ。」
「……美味かったんだって。」
「ほぉう。」
「相当強いから、俺が喰っても死なないし。なかなかいねーんだぞ。ああいう逸材。」
「本気で気に入ってやがるな?」
今にも刺し殺されてしまいそうな殺気を放って云われた。
「あ……の、まぁほら。やっぱり美味しいごはんが食べたいだろ?」
「俺が訊いたことの答えになってねェよ。はぐらかすな。」
行為の最中にしていたように、再び銀時の両腕を頭上にまとめる。
「また血ぃ抜かれて、動けなくなるまで犯されてェのか?」
「ちょ……っ、何でも力技で解決しようとすんの止めようね高杉君!?」
「てめェに云われたくはねぇな。」
「……っあああ面倒くせぇ!」
こうなるともう本気で納得するまで高杉は止まらない。
誤魔化しもはぐらかしも赦してくれない。
「俺に喰われると、すげー消耗すんだろうがお前!」
「当たり前だろうが。てめェ自分がどんだけ燃費悪ィか判ってねーのか?」
高杉の言葉に今度は銀時が不機嫌そうな顔になる。
「そんで、消耗したらテメーはいっぱい狩って補充するだろ!」
「しなきゃ死ぬだろうが。喰われっぱなしなんて冗談じゃねぇぞ。干からびる。」
銀時が何を云いたいのか、高杉が珍しく量りかねている。
いつもなら、そろそろ銀時が何を云いたいのか察しをつけてくれる高杉。
珍しく鈍い反応を返すから、銀時はつい視線を逸らして、無理矢理続きを呟いた。
「お前の血に、俺以外の力を……魔力を感じる。」
「あ?」
「お前はさ、今……俺にお前以外のニオイが残ってるって、すげー厭がったけどさ、」
するりと伸びた銀時の手の平が高杉の頚にかかる。
鋭い爪が、少しだけ皮膚に食い込んだ。
「俺だって、厭なんだぜ?」
ぷつ……と紅い雫が伝う。
「俺だって、お前が思ってる以上に、厭なんだぜ?」
「ぎ……ん、」
「お前が、俺以外のヤツから力を奪う度に、」
頚の皮膚に食い込む爪先が、少しだけ深くなる。
「お前に、俺以外の気配がまとわりついてる。お前の血に、お前以外のニオイが交じってる。」
「銀時、てめェ、」
「腹立つ。」
「――――っ、」
云うなり、銀時は爪先で高杉の頚筋を切りつけた。
大きな動作の割には浅く引っ掻いた程度で、頚にはうっすらと血の流れる紅い痕が出来たのみだが。
その銀時の腕をとらえて、高杉が俯く。
「……っくく、」
「あん?」
肩をゆらして、くつくつと笑う。
「何笑ってんだオイ。」
本気で機嫌の悪そうな銀時とは裏腹。
顔を上げた高杉は、良く見るいつもの、不遜で不敵な笑みになっていた。
「てめェも、随分と可愛らしい嫉妬してくれてんじゃねェか。」
「……はああああ!?」
投げつけるくらいの勢いで、腕を掴む高杉の手を振り払う。
「誰がてめーに嫉妬なんぞするかよ!?」
さも厭そうに叫んでみるが、高杉は一切意に介さない。
「してんじゃねぇか。」
「どこがだ!?」
「例のイヌんとこに行ったのは、俺に対するあてつけか?」
「何でそういう解釈!?」
「まぁ、そういうことなら仕方ねェな。赦してやらぁ。」
「どんだけ上から目線んんんん!?」
「叫ぶな。可愛くねェ。」
「男だっつーの! 可愛いなんざ思われてたまるか!」
「……しょうもねェな。」
たいした力も入れずに銀時を引き寄せる。
厭そうな表情をする割には、あっさりと腕の中に納まった。
「けどな、」
「ンだよ。」
「どうしようもない時だけは……衝動負けして冷静じゃねェ時だけは、ソイツの処に行くんじゃねぇ。後は食事に使うなり何なり好きにすりゃいい。」
「なんだよソレ。」
「てめェ、自分が本気で余裕がねぇ時、どういうツラして相手を見てるか判ってねぇだろ。」
「そんな酷い顔はしてねー筈だぞ!?」
「…………判ってねェ。」
高杉が深々と嘆息した。
「そういうツラは、俺にだけ見せてりゃいい。」
「って云うけどよ、おめーいっつもどっか行ってんじゃねーか。」
「……来りゃイイだろうが。何処にでも。」
「いっつも誰かが一緒に居んだろうが。」
「それも気に食わなかったのかよ。」
「別にンなことひとっことも云ってねえ!」
「誰が居ても気にせず喰えばイイだけの話だろうが。」
「気になるわボケェエエエエ!」
「叫ぶなうるせェ。」
抱き締めた背中に子どもにするようにしてぽんと手をのせる。
「てめェだけだ。」
「何がだよ。」
機嫌が悪い、と示したいらしい声。
「てめェより優先するもんなんて、何も無ェんだよ。」
「おめーが云うと誠意が感じられねーなオイ。」
「犯すぞ。」
「ゴメンナサイ。」
きゅ、と掴む手の平に力がこもった。
「我が侭でも何でも振り回して、いつでも俺を喰いに来い。」
愛しくてしょうがない気持ちにさせられてしまう。
「次に俺よりあの野郎を選んでみろ。」
「……どうする気だよ。」
「鎖に繋いで、血も与えずに死ぬまで犯し続けてやる。」
「……は、上等だコノヤロー。」
本当に困った、白いイキモノ。
「やれるモンならやってみろ。」
心底愉しそうに、腕の中で不敵に微笑む。
「いい度胸してやがる。」
魔性の白い、ヴァンパイア。
20140418改(KTサイト90000打リクエストより)