いつからだったか、気づけば目線で追っていた
やわらかく揺れる銀糸
白い首筋
紅い瞳が死んだ魚の眼のようなどと
気づいてしまえば、あんなものは ただのみせかけ
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かたおもい、未満
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街の中へ脚を運べば、偶然などではなく、その姿を見つける。
「……んっとにお前はヒマなんだな、万事屋。」
鬱陶しいものに出遭ってしまったかのように、さも偶然であるという風に、声をかける。
「あれ、土方君。」
眠そうでダルそうな声が返ってくる。
「ヒマな俺と喋ってるってことは、土方君もヒマなんでしょ。」
「俺は外回り中だ。お前んとこと一緒にすんな。」
「銀さんだって、ちゃんとやる時はやってるんですー。」
……いつから、こんなことになっちまった?
いつの間にか、その姿を探すようになっていた。
万事屋はなぜか、真選組と接触する機会が多かった。
自分ばかりではなく近藤さんも、総悟も。どのメンバーであっても、顔を合わせれば、最終的にはほぼ喧嘩というパターンなってしまうが。
それでも接触は接触。
自然と相手の言動から、自然と相手の行動パターンが把握できるようになってくる。
外回りの際には不自然にならない程度に……と思いながら、会えそうな場所に行き着いてしまう。
気づいたらそんな状態だった。
今日のこいつは川原に寝転んでぼんやりしていた。
何をするでもなく川の向こう側を眺めるこいつを、ちらりと盗み見る。
色素足りてねぇんじゃねぇか……
日の光に白い肌が透けて、銀髪が風にやわらかく揺れていた。
気持ちよさそうに、のんびりと寝転んでいる。
いい年した大人が、こんな真昼間からだ。
人様の子供をふたりも預かっている、万事屋の主がこれかと思う。
怠惰極まりない。
だが、そんなことを思って眉間に皺が寄るのかと思いきや、気づけば微笑んでしまっていた。
薄くひらいた唇がやわらかそうで、思わず吸い寄せられそうになる。
……ん?
……吸い寄せ……られ?
――――て、どうするうううううう!!!?
突然の表情の変化に、銀時がびくっと反応する。
「ちょ……ちょっと、何!? 土方君どうしたの?」
物凄く不審そうな目を向けられた。
「あ、煙草吸ってる傍からニコチン切れちゃった?」
「切れてねぇよ。」
思わずギロリと形容される視線で睨みつけてしまう。
「うあぁ、こっわ。」
そう言いながらもまったく恐れている様子などない。
顔が近づいてきたと思ったら、下から覗き込むように見上げられた。
「また瞳孔開きかけちゃってますよー。おまわりサン。」
「――――っっっ!!」
「お、開ききった……。」
――――近ぇえええええ!!
「て……っめぇ!!」
言うが早いか、刀に手がかかり抜刀しようとしてしまう。
「のわッ、暴力反対!!」
が、すぐに銀時の手によってに阻まれた。
普段はへらへらしているくせに、こういう時の動きは恐ろしく早い。
「てめぇが……っ、ふざけたことするからだろうが。」
「善良な一般市民に濡れ衣かよ、タチ悪ィな最近の警察官は。」
「……ちっ、適当な理由をつけて斬り倒すチャンスだったんだが。」
「ちょっとぉおおお!?」
「冗談だ。」
「いや、今絶対マジだっただろ。目がマジだった。」
「まぁいい。てめぇ、昼間っからプラプラしてねーで、ちゃんと仕事しろよ。」
「突然斬りかかって来ようとしたくせにお詫びとか無しかい!?」
「斬り捨てられてねーんだからいらねぇだろ。」
言い捨てて踵を返す。
乱暴にライターを取り出して、新しい煙草に火をつける。
最近の、自分の感情に混乱する。
何だって……?
俺はさっき何て思った?
「何カリカリしてんだよ。」
「してねーよ。」
「ふぅん?」
何やら意味ありげな視線を向けられている気がする。
振り返って視線を合わせるには、とてつもなく抵抗感のある、何かを覚られているような、探られているような、視線。
「声かけてみただけだよ。仕事中だ。もう行く。」
「へいへい。」
ちらと振り返ると、銀時がひらひらと手をふっていた。
相変わらずのゆるい表情。
やる気の全く感じられない態度。
タチの悪い、不敵な男。
気の迷い、だ!
ぜっっってぇ、有り得ねぇ。
なのに、名残惜しいなどと、感じてしまう。
ふたりだけで話す、この僅かな時間。
何やってんだ、俺は。
こいつの時間が名残惜しいとか、本気で、冗談じゃねーぞ。
20080917/20130908改