なあ兄弟、こんな言葉を知ってるか?
『心は身体についてくる。』
『事実は言葉についてくる。』
身体が繰り返したことと、言葉にして言い続けたことは、ホントウになるんだ。
だから俺は、ちょっとだけ試してみようと思う。
何回繰り返せば、お前の心が、お前の身体についてくるか。
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Stay gold 2
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金時が万事屋に加わってからの二日目。
早朝から出勤していた新八を加えて、金時、銀時、神楽の万事屋メンバー全員が揃って朝食を摂っていた。
「何か銀ちゃん、いつも以上に目が死んでるアル。」
いつもより格段に早い時間帯に金時に叩き起こされたせいか、銀時はぐったりとして、瞼もほとんど開いていない。
「銀さん、夜更かしでもしてたんですか?」
「ん〜……や。おめーが帰って神楽が寝た後、すぐに俺も寝たんだぜ?」
自分でもまるで心当たりがない疲労感に、銀時は困惑した。
先程、洗面所で顔を洗おうとしたら、目の下にクマまでできていたのだ。
「昨日コイツに働かされ過ぎたんだわ。」
銀時は金時を指差す。
「まるで疲れがとれねーわ。銀さんの身体、もうガッタガタだわ。コレ今日は休めってサインだわ。」
「何言ってんですか。銀さんがあの程度の労働で疲れるわけがないでしょう。今日もしっかり仕事ですよ。」
「だらしねぇぞ兄弟。俺なんかピンピンしてるってのに。」
「ふざけんな。こちとら生身の人間なんだよ。燃料さえあればいくらでも動けるテメーと一緒になんかするんじゃねーっての。」
「単に朝早く起きるのに慣れてねぇから、この時間が辛いってだけだろ?」
「……ぐ、うっせぇな。しょうがねぇだろ。」
図星を突かれた気がした。
確かにそれもあるだろう。
どうしても瞼が開かないのは、おそらく今が、常ならばまだ二度寝という名の惰眠を貪っている時間だからだ。
「でも脚のあたりとか、やたらガタガタしてんだよな。ひょっとして俺、歳なんじゃね? もうオッサンだから肉体労働的な仕事をすんのは限界きてんのかもよ?」
正確には、腰周りを中心に、特定の部分を特定の行為によって酷使された後のものに酷似した疲労感が溜まっている。脚というよりは、内腿のあたりや、股関節、そういう処だ。
特定の場所が、子供たちには伝えられないような類の、過度な運動後の疲労を訴えている。
断じてそんなことを、彼らに言えることはできない。
それにそもそも、昨日の夜は、そんなコトをしていない。 この金髪サラサラストレートのカラクリと一緒に、早々に寝入ったのだ。
ただ、誰かとそういう行為をした夢なら見たような気がする。いつもならその相手はだいたい決まっていて、自分を追い詰めるのは必ず、目つきの悪いあの黒髪の男だ。
だが珍しく、今回の夢の相手は彼ではなかった。そのことだけは覚えている。
ならば誰は相手だったのかと問われても、どうしてもそれが思い出せない。大きな声を出すなと言われて、どうしてもその言葉に抗えず、必死で声を殺して、喘ぎ声を漏らさぬように苦心して、 そんな状況で何度も吐精させられたのだ。
我ながら、とんでもない内容の夢だった気が……する。
まあ、夢はしょせん夢だ。内容はうろ覚えなのに感覚だけは鮮明な夢だったから、身体が疲れている気がしてしまうだけだろう。放っておいても問題はない。
しかし、自分があのような夢を見てしまうほど欲求不満なのか……と思うと、それはちょっと……いや、切実に困る。
それもあんな夢を見るくらいだ。寝言で迂闊なことを口走ってしまう可能性だって、ゼロではない。
金時が来たおかげで、万事屋に仕事の依頼はしっかり詰まっている。しばらく自分は仕事漬けの毎日になってしまうだろう。金時だって万事屋に常駐すると言っていた。
つまり、処理したいモノがあっても、処理できない。
処理してくれるであろう相手の処に押し掛けるという選択肢もあるが、そんなことは絶対にしたくないし、金時と新八が仕事をサボるなと言って、自分の逃亡を許さないだろう。
…………だが、しかし。
人体の構造上、どうしようもなく溜まってしまうモノはある。男には、己の意思とは無関係に体内で生成され続け、定期的に排出しなければならないモノが存在するのだ。
手遅れになって金時の横でヘタな寝言を口走り、挙句それを録音されて周囲にバラまかれるなどという洒落にもならない事態に陥るよりは、多少の無理をしてでも早めに始末してしまうのが得策だろう。
「よし。……ってコトで、疲労の癒えない銀さんは、今日はひとりで昨日稼いだ金を倍にしてくる!! お前らはコイツと今日の依頼をこなしててく……、」
「あ!! 銀ちゃんが逃げる気ある!!」
「金さん、やっぱり銀さんへの催眠、遠慮なくやっちゃってください!!」
「よしわかった。そうと決まれば今直ぐにでも……、」
「イヤ嘘です新八君!! ゴメンナサイ!! 冗談です!! マジで真人間催眠は止めてくれええええええええ!?」
現時点でこの三人から逃亡するのは、想像以上に難しかった。
「……っは、――――っん……く、あ、」
ケツの中に、何かとんでもねぇモンが突っ込まれてる。
朦朧としているような、夢を見ているような、肝心な処がはっきりしないもどかしい意識の中、内臓を穿つものの感触と動きだけが、身体の中から確実かつリアルに伝わっている。
「……っい……ふ、……んぅ、」
最初に言われていた通り、今日も大きな声を出せない。必死で唇を咬みしめて、身体の中で渦巻く快楽に耐える。
誰かに跨り、自分で挿れてみせろと言われ、言われるがまま、従った。
「どの体勢が楽か、言ってみろ。」
「――――っ!!」
自分で加減ができるから、騎乗位が一番楽だった。だが、そんなことは、過去、誰にも言ったことはない。
どんなに苦しくても、どんな体勢でも体位でも、苦痛なら眉を顰めて、息を詰めるだけで耐えられるから、自分が楽になることはそれほど重要ではなかった。
寧ろ他に気を紛らわせるもののない、ただ快楽を与えられるだけの行為のほうが、自分にとっては性質が悪くて、辛かった。
だから、誰かにこの体勢が楽だから、これでしてくれ……などと、言ったことはない。
第一、相手の男に乗って自分で腰を振ったりしたら、見上げる相手に何もかもが丸見えになる。冗談じゃない。
此れは、身体は確かに楽かもしれないが、精神的にはとてもじゃないが、楽になれない、好きになれない体勢だ。
それなのに今、どうしてか、コレが楽だ、と正直に告げて、自ら相手の上に跨った。
『俺のほうに尻を向けて見せろよ、――。こっちによく見えるようにしながら、自分でそこを広げて、解すんだ。』
誰がそんなことを――――!!
そう言って、いつもの自分なら絶対に抵抗していたであろう命令に、素直に従った。
何故か、逆らうという選択肢がなかった。
『顔、真っ赤だぜ?』
ほとんど灯りのない部屋なのに、相手はそう言って、頬に指先を滑らせた。
『……――ん、とき、』
相手は、誰だ――――?
『――――っく……んぅ……っ!!』
羞恥に身悶えながら、とんでもない体勢で相手の目の前で入り口を広げた。相手の指先が入り口を解す自分の指に絡められて、一緒になって入り口を崩そうとする。大量の潤滑剤を纏った指に入り口をなぞられて、何本もの指が腔内に突き挿れられた。
「……――――っく、あ!! ……っひ、」
自分で緩めた入り口に相手の先端を導くと、一気に根本まで突き挿れられる。その瞬間だけは、いつも息が詰まるような苦しさだ。
「昨日の今日だから、ちったぁ楽だろ?」
「ら……くなワケ、ある……か。」
どんなに入り口を解しても、中に溢れるほど潤滑剤を注がれても、そもそもこの行為の為にある器官ではない。無理やり押し広げられれば、とてつもなく苦しい。
だが苦しかったのは最初だけで、内臓はあっと言う間に咥え込んだ異物の形に馴染んでしまった。
自分で動けと言われて自ら腰を動かす頃には、異物感も圧迫感も、総てが気持ちいいという信号を送るだけの刺激に変わっている。
「――――っう、……く、」
抜き挿しを繰り返す度、身体の中の腹のほうから、とてもじゃないが黙って耐えてなどいられない感覚が襲ってくる。
「――ふ……っん……ぅ、んん――――っ、」
まるで中から溢れるようにぬるぬるとした液体が零れて、腹の中で激しく肉壁を擦る塊は滑らかに動く。腔内を埋め尽くす塊が内臓を押し広げながら行き来して、雁が特定の場所を通過する度にイってしまいそうになる。
気持よくてたまらない。
「……っ!! ふ――――んぅ、っく、」
ダメ――――だ。
我慢できない。声が出てしまう。
言われるがままに動かしていた腰の動きを止める。これ以上は、叫びだしてしまいそうで、続けられない。
「……っん、――っは、ふ……は、」
息を整えて、身体の感覚を落ち着かせようとすると、自らが跨る相手に、両手で腰を掴まれた。
「サボるなよ、――?」
名前を呼ばれた。しかしこれは、正確には自分の名前ではない。そして、この呼び方で自分のことを呼ぶ相手は、たったひとりしかいない。
「あれ、もう限界?」
頚を縦に振って肯定する。
こんなモノを突っ込まれて、声を出さないように自分で動き続けろというのは、到底無理な話だ。耐え切れるわけがない。
「しょうがねぇなあ。」
「――――っ!!」
ズブリと、再び奥まで異物が挿し込まれる。
「中途半端に『デケェ声は出すな』つったのが、よくなかったかな。ちょっとは声聞きたかったんだけど、状況が状況だし……しょうがねぇか。」
自分の肛内に深々と楔を埋めている相手は、行為の最中とは思えない涼しい声だ。ぽりぽりと頭を掻いてから、此方の顎を掴むと、しっかりと両方の目で視線をあわせさせた。
「じゃ、……、こっち見ろ。」
「な……に、」
「声は我慢しなくていい。好きなだけ口開けて、好きなだけ喘げ。」
「テメ――ば……っか、だろ!? すぐソコに、かぐ――、」
「朝にならねぇと、俺が命令した時以外、おめーは声が出せないだろ?」
「――――っ!?」
喉に、指先がふれる。
ゆっくりと撫で下ろすようにして肌を辿った指先は、身体の中心の、すっかり勃ち上がっていた器官の先端に、弄ぶようにして絡められた。
「しばらくこっちを構ってやる気はねーんだけど、ま、気にせず好きなように、イけるだけイってみようぜ?」
腹の中から、突如、理解が追いつかない動きが襲ってきた。
機会的な振動と、人間の器官としては有り得ない動き。
「――――っ!? ……っ!! ――――!!」
頚を振って逃れようとしたが、逃れられない。
一瞬にして追い詰められて、イかされてしまう。
自分で上半身を支えられない。身体がガクガク震えて、思わず倒れ込んでしまった。
「――――!?」
そして、叫んでしまうかと思うほどの強烈な刺激を与えられたにも関わらず、声が出なかった。
口を開けて、今度こそ絶対に、声を出してしまった――――そう思ったのに。
な……にが――――!?
「やたら擦ってばっかだと、……の内臓を傷つけちまうし――――、」
今度は組み敷かれて、腰だけを高く持ち上げる体勢にされる。
相手の腰の中心から伸びる楔は、ぎっちりと自分に突き刺されて、繋がったままの体勢だ。
「……っ!? ――――!!」
その繋がった部分から自分の中に埋められているものの、動きがおかしい。
腹の中を暴れまわるものの動きが、明らかに、おかしい。
「――――っ!! ……!!」
中に入ったまま特定の場所だけが振動して、それが内壁の特定の場所ばかりを狙っているかのように動く。
「――――――っ!!」
声に出して叫んでしまう。そう覚悟したのに、またもや己の口からはひとつの音も出てこない。
「……っ!! ――――!!」
断続的に続けられる動きに、最早何が起きているのか解らなくなる。ガクガク震え続ける身体は全身を内側から掻き回されているかのような感覚で、完全に制御できなくなっている。
「コレだけでも、結構イイもんだろ?」
「……――――!?」
テメェ、俺のケツん中に、いったい何を突っ込んでやがる!?
喘ぎ以外も言葉にならない。どんな声も、ひとつの言葉も出て来ない。
さらりとした、真っ直ぐな前髪が揺れた。
楽しそうな視線。あまりにもよく知っている顔。
そこまで判っているのに、なのに、何も判らない。
腰を抱えられたまま、何度も空イキさせられる。
おかしくなる――――って!!
抱きしめられているのに、身体の中に有る形は間違いなく見知った形状のものなのに、どうやっても人間にはできるはずのない蠢きと振動が、そこから伝わってくる。
何が起きているのか、どうしてこうなったのか、何もかもが判らない。
現実かどうかも覚束ない。夢なのかもしれない。現実に起きていることなのかどうかの自信もない。
――め……っ!!
相手の名前は判っている。
判っているのに、どうしてか判らない。形にして取り出すことができない。
それでも、とりあえず拳を握りしめて、銀時はこれだけを心に誓った。
終わったら絶対に、――!!
テメーは一発、本気で打ん殴ってやる――――!!