SHORT STORY 過去に捧げたものたち

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 カレイドスコォプ-3
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 俺たちの住む魔界の大気には、魔力が満ちている。
 自然のものや、俺たち魔族から放たれるものやら、色々だ。
 濃い処もあれば、薄い処もある。
「人が最っ高に腹減ってる時に、傷も塞がりきらない身体で来るから。」
 因みに俺が住んでいる、お登勢のババァの城の周囲は、特に大気に漂う魔力が濃いエリア。
 自然、強い魔族が集まって、エリアを締める四天王なんてモンまで現れる始末。
「そりゃあ暴走もするでしょう。」
 それが今、物凄い勢いで吸収されて、どんどん薄くなっている。
「ね、大串君?」
「土方だ。てめー……ナメてんのか?」
「んじゃあ俺はてめーじゃなくて坂田銀時。」
 原因は、今俺のベッドを占領して、ぐったりしているこの男。
「……途中で、殺しちゃったかと思ったんだけど。」
 こちらも殺されるかと思うくらいの勢いで犯されたワケだが、身体は本当に正直だ。
 力のある血を得た後だからだろう。
 あれだけ滅茶苦茶にされたのに、回復しきって痛みも何も残っていない。
「お前、すんごい回復力ね。」
「てめー程じゃねぇよ。」
 云って視線で空を示される。
「……ああ、そっか。」
 夜天に浮かぶ、真っ赤に焼けた、銅貨を思わせる満月。
 魔族は大抵そうだが、特に人狼は満月の力を得て強くなる。
 回復力も勿論そうだ。
 大気中の魔力が、どんどんコイツに吸い寄せられている。
「穴空いちまうんじゃねーか……ココ。」
「知るかよ。」
「ババァにドヤされる。」
「そうなったら、それはてめーの責任だろ。」
「……まあ、そうなんだけどね。」
 つい本気で求めてしまったのは、手加減もせず、欲しいままにしてしまったのは自分だ。
 限界寸前までこの男の血を奪った結果、男の身体は回復のために必要な魔力を大気から吸収している。
 そういや、この種族は大自然と仲良しさん……だっけね。
「今日はやたらとでけー……。」
 そのまま墜ちて来てしまいそうな、丸い月。
 人狼は孤高の黒い戦士。
 森の力を得て、大地の力を得て、自らの力に換え、月の力でそれらを増幅させる。
「……だから、今日、来たのか?」
 最も月の力が増す日を選んで此処を訪れたのだとしたら、厭な男だ。
「……もう行く。」
 まだ少し蒼白い顔で、土方は立ち上がった。
 さすがにふらつくことは無かったが、来た時よりは明らかに消耗している足取りだ。
「ああそうだ大串君。」
「土方だ!」
「どっちでもイイだろ。」
「ブッ殺されてーのかてめーは。」
「まぁいいから、ホレ。」
「……あん?」
 自分の指先を少しだけ切る。
 とろり落ちた紅いひとしずくが小さな蝙蝠に変じ、パタパタと羽ばたいて土方に向かう。
 蝙蝠はキィと小さく鳴いてから、土方の手の中で一枚のカードに変わった。
 夜の空を流し込んだような色に、流れるような筆致の銀色で一行。
『万事屋銀ちゃん』
 他には連絡先も何も無いカード。
「この城の持ち主……ウチのババァって、この辺りじゃ四天王とか呼ばれてるらしくてさ。」
「……知っている。」
「あ、そうなの? んで、俺はそのババァの仲介で色々やっんの。何でも屋的なことを。」
「……だから、何だ。」
「何かあったら依頼よろしく〜。何でも屋だから何でもするぜ? あんま城の中でごろごろしてると、ババァがたまには外に出ろって煩いからさ。」
「貸し借り無しにするっつったろ。もうてめーとは関わらねーぞ。」
「だから、次からココ来る時は、依頼料と手土産の糖分持参で来いっつってんだろうが。この城入るのに手ぶらとか、マジで蹴り飛ばすからな。」
「……今、俺がてめーをブッ飛ばしてもイイか?」
「何でだよ?」
 黒い狼はうんざりした様子で、フカブカと溜め息をついた。
「二度と来るか。」
 と。
「遠慮すんなって。用があったら、来ていいぜ? いつでもな。」
「俺の話はまるで聞いてなかったな?」
「お前の血、けっこー美味かったんだよなぁ?」
「…………もう一度言う。二度と来るか!!」
 自分自身に云い聴かせるようキッパリ叫んで、土方は城を後にした。
 まるで何かを振り払うような、とても乱暴な足どりで。





20140418改(KTサイト90000打リクエストより)


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