SHORT STORY

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 はじまりは
 お互い
 ひどくつまらないことのようにキスをした
 けれども
 指先だけは、はひどく正直だから――――

――――――――――――――――――――
 くちびる
――――――――――――――――――――

 それは、ただ、何となくだ。
 たまたま隣に、白くてふわふわしたヤツが居て。
 たまたま近くに、やる気のない、いつものだらしないヤツの顔があって。
 たまたま、ふたりきりだった。
 目線が合って、暫く見つめ合って、気づいたら、どちらからともなく唇を重ねていた。
 ゆっくりと、触れるだけのキス。
 その紅い目に誘われて。
 その視線に捕らえられて。
 何でも無いことのように、どちらからともなく唇を重ねて、すぐに離れた。
 土方の指先が、たった今口吻けた銀時の唇に触れる。
 薄く開いた淡紅色の唇を確かめるように、ゆっくりとなぞる。
 すると、いつもの悪態がこぼれた。
「いったい何のつもりですかコノヤロー。」
「――――っ別に……深い、意味は無ぇ。」
 その言葉に銀時が目を細める。
「……ああ、そう。」
 銀時は、だったらいいやと、何でも無い事のように返した。
 動揺も無い。余韻も残そうとしない。
 密かに、焦燥した。
 一度触れてしまえば、唇をなぞった指先が、その指先になぞられた唇が、熱いのに。
 もっと、欲しいと、衝動に駆られる。
 土方が銀時の項に手をかけて、引き寄せる。
「――――っん、」
 先程とは違う、深い口付け。
「……っは、」
 銀時が合間に夢中で呼吸をする。
 その唇を、またすぐに唇を重ねて塞ぐ。呼吸さえ奪うように、言葉も発せられないように、舌を絡めとる。
「ん……っふ、」
 上ずる声と、膝が崩れそうになる身体。
 支えてやろうとすれば、自らを捕らえる腕に、縋り付く指先。
 その行為に、心の隅で頭を擡げる支配欲。
 此れ以上の事をしてしましそうな自分を、無理やり抑え込んだ。
 ようやく解放してやれば、酸欠に潤んだ目で、見上げられる。
「だから、何なんだって……の、」
 深い意味も無く、こんなキスをするのかよ、と視線が問う。
「…………、」
 ただその目を見つめる。その目を見つめ返す。
 とん、と、土方が銀時の肩に額を落とした。
「……悪ィ。」
 ぽつりと、詫びる。
 するりとその手が離れていく。
 とても、名残惜しそうに。
「何でも……ねぇ。」
 俯いてそう言うと、土方は去っていく。
「何でもねぇ……って、」
 銀時は自らの唇に触れた。
 先程、土方と重ねた唇に。
「いいけど……さ、別に。」
 そうは言ってみたものの、あんな風にされてしまったら、何でもなかった事になど、出来る訳ない。






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