はじまりは
いつもの俺たち
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それは無自覚のままに
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行きつけの店も同じ。
行動パターンも、思考パターンもことごとく同じ。
そんな俺たちは、喧嘩こそすれど互いを居心地悪く感じることは無く。
いつのまにか、会えば酒を飲み交わす仲。
ただ、そこに甘さなどあるはずも無く。
喧嘩も言い合いも日常。
後腐れ無く言い合える関係は、逆に心地よかったりもするが。
「だからてめーはモテねぇんだよ!!」
「うっせー!! 俺だって天パじゃなかったらモッテモテなんですー!!」
そんないつもの下らない会話から……
「どんだけモテててたってどうせてめーはお粗末なモンしかついてねーだろ、このニコチンマヨ!!」
「んだとこの糖尿が、犯すぞコラ!?」
「はっ、やってみろコノヤロー。」
今回は何故か、そういう方向の言い合いになった。
間違い無くそれは酒の勢い。
無言で睨みあって。
途中から、酔いなのか意地なのか、勢いなのかわからなくなって。
ぐだぐだになりながら、気づけばふたり、宿の布団の上に倒れこんでいた。
「て……め、重い。」
下敷きにされていた銀時がうめく。
「るせー……。おめーよりは軽いはずだ。」
「ムサイ男に圧し掛かられたってな、嬉しかねーんだよ。のけ。」
「おめーだってムサイ男だろうが。」
「銀さんはどっこもムサくありません〜。」
「……ッこの、上等だコラ。」
イラっとした。
嫌がらせのように、ならそのムサイ男にキスされちまえ……などと、土方は銀時に、強引に唇を重ねる。
歯列を抉じ開けて、口腔を貪った。
「――――ん……ぅ、」
わざと音をたてて、息さえつげない程に深く口吻けて、さんざん咥内を蹂躙してから、その口を解放する。
ザマーみろ。
せいぜい動揺すりゃぁイイ。
きっと驚いているだろうと思って銀時を見遣れば……
「ふ……ん、まぁ慣れてんな。」
余裕そうな態度だった。
……まあ、慣れてんな……だと?
プライドを刺激された
……ふざけんな!!
これでも結構巧い方なんだよ。男相手は初めてだが、女相手なら、場数はふんでる。
「……のやろ、」
意地になって銀時の身体を押さえつけ、耳朶に舌を這わせれば甘い声。
「んぁ……、」
その声に何故か、ぞくりと腰にはしる甘い痺れ。
思わず喉を鳴らす。
言い負かして、キスで黙らせて、それくらいで十分だろうと……思っていたハズ……が。
自分の下で、ぴくりと反応した身体に、まといつく色。
こいつって、こんなだったか……?
何とはなしに、そのまま首筋を辿り、鎖骨に口吻ける。
イタズラ心半分に、服の上から胸の突起をかるく爪でひっかく。
「ひ……ぁ、」
素直に反応する身体。
潤んだ瞳にぱくりと開いた口。
先ほどのキスで、唇が濡れていた。
やべ……、ぶち込んでやりてぇ……。
危険な発想が脳裏を掠める。
気づけば、熱を孕んで勃ちかける下半身。
銀時の指が、布越しにそれを辿ってきた。
明確な意図をもってふれてくる刺激に、ふれられた器官はたちまち嵩を増す。
「――――っ、オイ」
「あれ、余裕無い感じ?」
「……っ誰が、」
睨みつければ、いつものあの、ニヤニヤした笑い方。
なのに、
「抜いて、やろぉか?」
酒のせい……か?
正気なのかも危うい、とろんとした眼差しと上気した頬。
どこか挑発的な目線に、反発心とは違うトコロが刺激された。
が、さすがにそれは……などと逡巡しているうち、前を寛げられる。
にっと妖艶な貌をみせると、ためらいも無く舌をのばされた。
「な……っ、」
動揺する。
だが口に含まれれば、想像を絶する心地ヨさだった。
酔いにたゆたう意識と、コイツの口からこぼれる吐息と、湿った音に、崩れてはいけない何かが崩れていく。
いつもの銀時と、同じ人間とは思えない色香に、在りえないことに、理性がブチ切れた。
完全に勃ちあがった自分を、咥える銀時から外す。
「え……、」
頤を掴まえて、劣情を隠さずにその眼を覗き込めば、銀時は僅かに、身を竦ませた。
我知らず、唇の端だけをあげて笑う。
「随分と余裕そうだな?」
「ひじ……、」
すでに、意地だとか張り合いだとか、そんなものは関係無くなる。
「こんなコトできるんなら、遠慮はいらねぇな?」
「え――――、」
「その余裕、無くしてやるよ。」
「ちょ……っ、んぅ、」
言葉を返そうとした銀時の唇を塞ぐ。
刺激されたプライドと、煽られた欲情と、好奇心に任せて、今だけのコトだから……と。
「あ……っ、ヤ、待て……って、」
再び組み敷けば、銀時が少しだけ焦りをみせる。
「待てるかよ。」
そのサマに優越感を覚えて、乱暴に衣服を剥ぐ。
堕としてやるよ――――
どこからか、黒い欲沸き起こる。
部屋にあった潤滑剤を垂らして慣らした身体をひらく。
きつい締めつけを貫いて、突きあげれば、鼻に抜けるような甘い声で、銀時が啼いた。
「ん……っア、ァアッ」
熱く、蕩ける銀時の身体。
腰を打ちつけるたびに、弾ける水音。
信じられないほど、煽られる。
慣れている……?
と、そんな考えが、興奮しきった頭の片隅を掠めたが、
「ふぁ……ア――――ッ、」
湧き上がる疑問も、銀時の喘ぎに掻き消される。
「ぎ……ん、ときっ、」
名前をよべば反応して、背中に腕をまわして、しがみついてくる。
「ひ……っじ、かた……っア、」
ぽろぽろと涙を零して、快楽に流されるその貌に、手加減など出来るわけも無く、夢中に なって、その身体を貪った。
「ぐあ……っ!!」
目覚めれば、開口一番、色気のない声が発せられる。
「え……何コレ、どういうコト?」
銀時が自分の状況を確認して、間の抜けた言葉を吐く。
その様子に、昨夜のような色香などまるで無く、あれは見間違い、もしくは勘違いだったかなどと、思わされてしまう。
「つーか、いってぇよ……もしかして俺、ヤられちゃった?」
「もしかしても何も、てめぇが誘ったんだろうが。」
正確に言えば、先に仕掛けたのは自分だが。
それは黙っておく。
「……だからって。ふざけんなよ、ちったァ加減しろや。」
どうやら銀時はそのあたりの記憶が曖昧らしい。
脱力して、布団に沈み込む。
「ノリでこんなコトされてちゃ身体もたねーっつーの。」
「――――っ、」
思わず、ノリで抱いたわけじゃねー、と口走りそうになった。
が、その言葉は呑みこむ。
「ん? 土方君?」
だったら何だと言われても……自分でもわからない。
――――危うくノリでこんなコトするか莫迦!!
と叫びそうになったが……何だ。コレは。
「あ、因みに、俺は金持ってないから、宿代は土方君ヨロシクね。」
「はぁ!? ふざけんなよてめぇ。」
「しょうがねーだろ。飲み屋で払った分でもう銀さんのお財布はスッカラカンだったんだから。」
「てめーはそれでも社会人か!?」
余韻をカケラも残さない、いつもの通りの俺たちに、いつも通りのやりとりに、少しの安堵と、少しの焦燥。
此れは未だ、無自覚の想い。