音も気配も感じさせずにするりと背後に忍び寄る
みつけた獲物の首をとらえて
理不尽に弄んでみるために
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弄ぶ・・くび
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「ということで、ここからは少々、ふたりで話したいことがあります。」
池田家の現当主・夜右衛門は、隣に立つ銀時を視線で示しながら云った。
新八と神楽を含めたその場の全員が、先代夜右衛門の逃がした罪人の中に銀時の名前があると知らされた、その直後のこと。夜右衛門は、引き続き朝右衛門を護る手伝いをして欲しいと万事屋に求めた。
「それと、これまでの話を踏まえた上で、もう少しお願いしたいこともあるのです。」
そして朝右衛門を護る以外にも、まだ頼みたいことがあるのだと云う。
辻斬り事件の犯人と疑われていた朝右衛門を笑顔で受け入れた処刑人一族の当主は、報酬の他に礼だと云って膳まで用意し、まるで世間話でもするような気軽さで、とんでもない事実と過去を晒し出した。
警察が犯人だと思い込んで追っている連続辻斬り事件の真犯人は、朝右衛門ではなく自分であるということ。
事件の被害者となっている者は皆、先代夜右衛門が役目に背いて逃がした罪人であり、本来、首を切斬られて処刑される筈の者であったということ。
そしてその中に、坂田銀時の名前もあったということ。
淡々と聞く銀時と、その内容にあっけにとられる新八と神楽をよそに、夜右衛門は次々に勝手に話を進めて、万事屋へ追加の依頼を寄越してきたのだ。
明らかに裏のあるその依頼を受けるのか、跳ね除けるのか、話はこれからという時に、新八と神楽は席を外すよう求められる。
「僕らだって万事屋の一員ですよ。こんな面倒な状況で依頼があると云われたら、僕らだって話を聞かないと、」
ここまで内情を暴露しておきながら今更何を、と反論する新八を、池田家の当主は意図の窺えない笑顔でそっと退けた。
「私たちはまだ、お話ししていない面倒ごとを抱えております。」
既に一族の当主が辻斬り事件の犯人だという自白までしておいて、これ以上まだ面倒ごとが存在するのだと云う。
「昔の話も……ありますから。」
夜右衛門は視線だけで、銀時をちらりと窺った。彼の過去に関する話もあるが、どうするか、と。
新八と神楽はその仕草に迷う。もし、銀時が自分たちには聞かれたくないと思っている過去を夜右衛門が知っていて、それを今話そうとしているのだとしたら。どうするべきか。ふたりに背中を向けている銀時の表情は窺えない。ほんの少し逡巡している間に、夜右衛門に追い討ちをかけられた。
「それからさっき、髑髏をひとつ割って棚の陰に隠したでしょう。せっかく飾ってあったのに。」
たくさんの髑髏が並べられた部屋の飾り棚。その中の一ヶ所だけ、不自然に欠けた空間を示された。
「それを、ちゃんと直しておいてもらいたいですし。」
死神は笑顔で囁く。
「理解され辛いことでしょうが、ソレ、私にとっては結構大事なものなんですよ。」
「……バレてたアル。」
「…………スミマセン、でした。」
大事なものだと云うものの、表情にも声にも怒りが感じられないのが、得体が知れず恐ろしい。会った瞬間から薄ら笑いで感情の読み取れない相手だったから表情も言葉も信用出来ない。無理には逆らえず、結局は促されるまま、ふたりは髑髏を抱えて案内された別室へと移動させられた。
「本当に大事なモンかよ。」
「貴方は昔の話をするのに、あのふたりがいても問題ありませんでしたか?」
「…………。」
それについては、本当にどちらとも云えなかった。知られて困るような過去は無いつもりだが、夜右衛門の知っているであろう自分の昔話など、聞いて気分の良いものでは絶対にない。どう返すか迷って、結局、銀時は黙ってしまった。
「……さて。」
ふたりきりになったにも関わらず、夜右衛門は話を急ぐ気配がない。おもむろに立ち上がると、髑髏を飾り並べてある棚へと向かった。
「それにしても困りましたね。首のコレクションがひとつ減ってしまいました。これはレイアウトを考え直さないと。」
真剣に見つめる先は、神楽に割られた髑髏が置いてあった場所ではない。
「……オイふざけんな。ソコ、俺の乳首が飾ってあった場所じゃねーか。いつのまにソレありきのレイアウトになってたんだよ。」
「あれ、良いポイントになっていたと思うのですが、」
「ふざけんな。二度とさせるんじゃねぇしするんじゃねぇ! 初対面の人間の乳首切り落とすとか、一体どういう躾けの仕方してりゃそうなるんだよまったく。」
「どのような首であっても美しく完璧に落とせるように、我々は幼い頃からそう厳しく教えられて、」
首のことになると、どうも熱を孕むようだ。付きあっていればどこまでも脱線しそうな調子で、池田家の当主は続ける。飾り棚を眺めながら、相変わらずの笑顔でだ。
「ンなことより、人の昔話をネタにしてまで頼みたいっていう、疚しい内容の方の依頼をさっさと話せっての。」
向きあって睨んでも、貼りついた笑顔は崩れない。
「すみません、つい。」
話す内容を自分の中で確認するような仕草をしながら、夜右衛門はゆっくりと縁側へ歩を進めた。
銀時と肩越しに擦れ違う。
「その前に、確認しなければならないことが。」
ひゅ、と少しだけ空気が動く。
「――――っおい。」
瞬間、またしても夜右衛門は銀時の背後にひたりと居ついた。身のこなしは流石だ。殺意が感じられなくて、つい反応が遅れる。何かしらを企んでいるであろうことは、間違いないのに。
「おい……!?」
何をしでかすつもりなのか、夜右衛門は両腕を銀時に絡ませて、ごそごそと身体に纏わりついている服を邪魔そうに退けていく。
「気になさらないでください。本当にちょっと確認するだけですから。」
それぞれのてのひらが勝手に入り口を見つけて服の下へ潜り込んだ。肌を這って目的のものに辿りつくと、躊躇いもなく指先でそれを転がし始める。
「ば……っか何を!?」
左は様子をみるように優しくふれられて、右は遠慮なく弾力を確かめるように潰される。
両方の胸の突起が、夜右衛門の指先に捉えられていた。
「イ……って、何しやがる!?」
「何って、朝右衛門のしでかしたことですから、」
くい、と小首を傾げさせるように、少しだけ左の突起が圧迫された。
「――――っん、」
「まがりなりにも私は当主。家の者がしたことの責任はきちんととらなければなりません。」
云いながら、尚もしつこく同じ動きを繰り返す。
「だから何をしてやがる!?」
ごそごそと服の下で動く手を払いのけようと、銀時がもがいた。
「乳首、まさか無いとは思いますが、戻すのを失敗していたら申し訳ありませんから。」
「いや失敗って何が!? 人の乳首をとったりつけたり出来るとか思ってる時点でお前の人生の方が失敗しちゃってるからね!?」
「さきほどコレを戻す時、ちょっと血が出てしまっていたんです。」
もがく銀時の動きを制しつつ、更に指先が肌を這う。
先端に少しだけふれたかと思うとまた押されて、指の腹が優しく表面を撫でる。
「イヤ、つけてくれただけで十分だから!! もう責任とか感じてくれなくてイイから!!」
「おや、もしかして後ろからされるのはお嫌いでしたか?」
わざとだろう。耳元に唇を近づけて囁かれた。
「あ……ったり前、いやそうじゃなくてええええ!!」
「ああ、お嫌いじゃないなら良かったです。どうしても職業柄、後ろからの方が落ち着くタチでして。」
「タチってどっちの意味ィ!? ……じゃなくて、何で俺はおめーに乳首を弄られてるんだよ!?」
「ですから当主として朝右衛門のしでかしたことの責任を……、」
「さっき聞いたわボケェエエエエ!!」
力技で振り払うことも考えたが、既に二度、あっさりと乳首をとったりつけたりされた恐怖が甦る。ヘタに動いて二度も同じようなコトをされるのはごめんだった。胸の先端を弄る動きを封じつつ、両手首を掴んで退かそうとしてみたが、脇に腕を差し込まれた状態では力が入らない。そして当然のことながら、相手の腕力もそれなりのものだ。不利な体制で力比べをして、勝てるものではなかった。
「いささか乱暴でしたし、手元も確認していませんでしたから、」
「ああああさわらなくてイイ!! 確認もしなくてイイから!!マジで大丈夫だから!!」
「そうはいきません。取りつけ前に見ましたが、一度何かに踏み潰された形跡もありましたし、」
「細かく観察すんなあああああ!!」
指の腹を先端に押しつけながら、擦りつけるように潰され続ける。
「や……っめろ、って。」
話している間も続けられる刺激に、両方の突起が硬くなり始めていた。
「右と左で感覚に違いがあってはいけません。取りつけが失敗だったということになってしまいますから。」
会話をしながらも、夜右衛門は弄ぶ指先を一時も休めない。
「ふれられる感覚はどうでしょう、問題ありませんか。」
「も……っ、」
このような弄り方をされ続けて、問題無いわけがない。おかしくなるからさっさと止めろと云いたいが、そう伝えるのは物凄く問題がある気がする。しかし問題大有りだと叫べば、また取りつけに問題があっただの何だのと、余計な真似をされるに違いない。迂闊に返事が出来ない。
「やはりどこかおかしい処がありますか?」
答えに迷っての沈黙を、勝手に判断したらしい。オカシイのはお前の頭の方だと云ってやりたかった。さっきから一度とれた部分の確認をしているにしては、随分と遠慮なく捏ね繰りまわされている気がする。どう考えても確認とは名ばかりになってきた動きを続けられて、腰にも身体の中心にも、あらぬ兆しが現れ始めていた。
これ以上、続けられるわけにはいかない。
「も……イイっての。マジで大丈夫だっつってんだろ!?」
「まだ大丈夫かどうか、私が確認出来ていません。」
「ちょ……っコラ!!」
右と左を順番に、ぐりぐりと少し強めに弧ねられた。身体の芯を伝って、ぞくぞくとした痺れが腰まで届く。
「う〜ん……右と左で、ちょっと反応が違いませんか?」
「知……るか、ンなコト!!」
それは元からそうだし第一、両方の反応が全く同じな訳がないだろう、とは叫べなかった。叫んで殴り倒してやりたいが、自分が叫ぼうとした内容のどこかに、明らかな失言の気配を感じて踏みとどまる。
「どちらも反応は良いですが、ちょっとこっちが鈍い気がします。」
「――――ッ!!」
爪弾くようにして、固くなった先端を弾かれた。
膝が崩れそうになる。少し強いくらいの刺激を悦ぶ身体が疎ましい。
他の男に身体さわらせると憤慨するくせに、結局は付け入られる隙を作ったことになる、いつも愉しそうにここを延々弄り続けて、自分の身体の感覚を変えてしまった男の顔を思い出し、そちらにまで腹が立ってきた。
「……まあでも、これなら大丈夫でしょうか。」
びくりと反応した身体に満足したように、夜右衛門が呟く。
「反応は良好ですし、これだけ弄っても取れないようなら、もう安心ですね。」
「な……にが、良好だ、バカヤロウ。」
人の身体をさんざん弄んで、既に形を変えた器官を隠すのも難しい状況にまで追い込んでおきながら。
「用が済んだなら、さっさと放せ。」
「いえ。まだ肝心のふたりだけでお話ししたいことが終わっていないじゃないですか。」
銀時の身体をきつく抱き寄せながら、夜右衛門は尚も固く凝った両胸の先端を弄ぶのを止めない。
「さっきも……今もですが、貴方が私に、易々と後ろをとらせてくれたのは、どうしてですか?」
「……本気で、人の後ろをとりに来たくせに、よく……云う。」
延々両方の乳首を弄られて与え続けられる刺激に、いいかげん立っているのも辛くなってきた。硬く尖った先端を指の腹で転がされるたび、どうしようもない感覚が腰に届いて溜まっていく。
「いつぞや街中で試したことがありますが、あなたの背後はとれる気すらしませんでした。」
「っは、そう……かよ。」
「何が違ったんでしょう。色々と、上手く隠していたつもりだったのですが。」
この体勢も非常に良くない。背後をとる相手と会話をすることになると、夜右衛門はずっと耳元で囁き続けることになる。話の内容は色気のカケラもないものなのに、耳朶を振るわせる空気の振動だけは、刺激になって肌を伝う。絶対にわざとしているのだろう。時折、項に唇がふれるのも、ぞくりとさせられて身体から力が抜けていく原因になっている。何が、これなら大丈夫あとは話だけ、だ。そうは云ったくせにまだ飽きもせず、人の乳首を弄り続けるというのは一体どういう了見なのか。
「この状態の貴方なら、始末するのは簡単かもしれませんね。」
「その方が、てめーにとっちゃ楽だろ……な、」
恐らく夜右衛門の聞き手であろう腕が、するりと下へ降りていった。
「最初はそう思っていたんですけれど、」
服の上から下半身の中心で硬くなった器官をなぞられる。
「さ……っわんな!!」
「まあそう云わずに。」
「――――――っ!!」
布越しに幾度か擦られて、思わず腰が動きそうになるのを何とか堪えた。
「色々と考えましたが、本気であなたを殺そうとすると、やはりとても骨が折れそうですから、」
もう少し前の時点で、出来れば後ろをとられた瞬間、あの時点でこの男の腕から逃れておくべきだった。先ほど思いついた時に、黙って殴っておくのも良かったかもしれない。当然のことながら、今頃後悔してもとっくに手遅れだが。
「別の角度から弱みを握っておいた方が、何かと都合が良いかと思いました。」
平坦だった声音が、少しだけ愉しそうなものに変わる。
「貴方がより確実に、私の思い通りに動いてくれるように。ご自分が辻斬りに遭いそうなくらいでは、大人しくしていてくれそうにありませんし。」
「……本音は、ソコ……かよ。」
「あとは予想以上に反応が良かったのでつい。愉しかったものですから。」
それも偽らざる本音だろうと、容易に想像出来る云い方だった。
「お願いしたいことはさきほど申しあげた通り、今後も引き続き朝右衛門を護って欲しい、それだけです。」
完全に勃ちあがった器官の先端が、ぐりぐりと布越しに擦られた。
「……っん、く。」
もどかしい動きを続けられる。危うくもっと強く、と云ってしまいそうになる。
「そして、朝右衛門を助ける以外の、余計なことをしようと考えられては困ります。」
「てめ……は、とんでもなく、タチの悪い野郎だな。」
「死神と呼ばれる一族を纏めていますから、善良では務まりません。」
あっさりと認めてから、首筋に軽く歯をたてる。
「――――っ、」
下半身を撫でていた手が、再び上に戻ってきた。
「貴方が泣いて耐えられないと云うまでここを攻めてみるか、」
あからさまな愉悦を含んで、胸の先端を弄る指先がリズミカルに動く。
「や……っめ、ろ、」
「この状況のままあの子供たちを呼び戻してしまうか。」
布越しに一度ふれられて更に硬さを増してしまった器官を放置して、夜右衛門は延々と同じ処ばかりを指先で遊び続ける。
「さて、どちらにしましょうか。」
胸の突起ばかりを弄られ続けて、既に身体の芯が麻痺し始めていた。言葉を返せないまま何とか逃れようとしたが、動いた隙に膝を崩されて、そのまま畳に押し倒される。後ろから圧し掛かられる体勢で、耳元に囁きが落とされた。
「逃がしません。」
冷たい声が、耳元から身体の奥に響く。
「貴方は油断ならない方ですから。」
膝をつく脚に乗られながら押さえつけられる体勢は、完全に後ろから犯されている状態のそれだ。
「こんなに弱いのは予想外でしたが、弱点を見つけられて良かった。」
いっそ清々しいほどの、まったく悪いと思っていない、本当に良かったといった態で、夜右衛門は呟く。
「大きな声を出すと聞こえますから、我慢してくださいね。」
肘をついて身体を支えていた銀時の腕を掴んで上体を引き寄せると、色を変えた乳首に咬みつく。
「い――――っ!!」
潰れない程度に咬んで舌を絡めるとびくりと震えて、身体が崩れ落ちてしまいそうな程の反応を示した。
「あ……っや、めろ。」
吸いあげて歯で表面を扱くと、首を横に振って必死に耐えようとする。
服と下着の中で勃ちあがって苦しそうにしていた器官を解放し、やんわりと握りこんで囁く。
「誰に躾けられたのかを教えていただければ、ここを直接刺激してさしあげますよ。その方が早く終わりますし、貴方も楽でしょう?」
胸を抓り転がすと、手の中の屹立もびくりと反応する。誰がここまで反応の良い身体に仕立て上げたのか。弱みを握る意味だけに止まらず、つい個人的な興味もそそられる。
「だ……っれが、云う……か、」
涙をためた眼で睨まれて、ざわりと肌が粟立った。このまま最後までしてしまいたい衝動にかられる。
「そんな眼で云われてしまうと、手加減できないじゃないですか。」
時間をかけて、もっと崩して、もっと啼かせて、ぐちゃぐちゃにしてしまいたくなる。
この後使わなければならない、大切な駒だというのに。
自分の下で弄ばれて痙攣する身体は無防備で、とても白夜叉と呼ばれた男と同じ人間とは思えない。反応の愉しさも手伝って、ついこれまでしたことがない程しつこくしたのも事実だが、乳首に対する刺激だけでここまで容易く乱せるとは思っていなかった。
殺意が脳裏を掠めでもした瞬間に、この態度は一変するのだろうが。
本当にタチが悪いのは一体どちらの方か。
溺れかけたことに気づいて、笑ってしまいそうになる。
容易く楽にしてやるのが気に食わず、もう少しだけ辛い思いをしてもらうことにした。
「あのふたりが戻るまでまだ時間はありそうですから、それまでは試せますね。」
「……あ?」
怪訝な視線を向けられる。ここまでされて、まだその可能性に気づいていなかったのだろうか。
「ここだけでイいけるかどうか、です。」
笑顔で告げて、そっと胸元に口吻けた。
「ば……っか、やめ、」
相手が慄くのが肌から伝わる。
出来もしないのに後ずさろうとする身体を捕らえて押し倒し、畳に縫いつけた。何を聞いてもたいした動揺をみせなかった双眸が、涙に濡れたまま不安そうに視線を彷徨わせる。
思わず唇が弧をえがいた。
「逃がさないと云ったじゃないですか。」
夜右衛門は既に愉しみを優先し始めていた。子供たちを先に帰すとしたら、言い訳はどうしようかと考えながら、再び硬いままの胸の突起を咬む。
「や……だって、」
抵抗を示す声が既に甘い。思わず唇を重ねて貪ってしまいたくなるが、溺れてしまうことを懼れて思いとどまる。
初の目的が何だったのか、忘れてはいけない。芽生えた衝動にはそっと蓋をする。
「ん……っあ、」
舌先を押しつけ、胸の先端を押しつぶして転がす。
銀時は手の甲を唇にあてて、声を殺そうと必死になっていた。
「ん……んぅ、」
夜右衛門は先端からわずかに雫を零した屹立にはふれず、その周囲に指を這わせて思わせぶりに肌を辿る。
「や――――っあ、」
もどかしさに涙が零れた。身体の芯が疼く。腰の奥に溜まった感覚を解放して楽になりたくても、欲しい刺激が得られない。
「そ……んなんで、イけ……るか、」
だからいい加減に諦めろと云いたいのか、勃ちあがった器官にふれて楽にしてくれと云いたいのか。
「この程度では足りない、ということですか。」
夜右衛門はどちらともとらなかった。
「涙が出るくらい反応しているのに?」
弄られてぷっくりと腫れた乳首をやわりと咬んで摺り潰す。
「い――――あ!」
耐え切れず、少し大きな声がもれた。
「止めろ……って、云って、」
「そうは聞こえませんでした。」
吸いあげて、潰して、擦り続ける。
「や……っも、ダメ、」
息が荒い。もうほとんど身体に力の入っていない彼は、このまま続ければきっとここへの刺激だけで達することも出来るだろう。とても面白い。そうされてしまった彼の表情を想像すると、とても。
けれど、ふと、もっと相手を追い詰められる気がして、別の方向に動いてしまった。
「ひ――――っあ、何……っ!?」
全く予想していなかったのだろう。
銀時が小さく悲鳴をあげる。
突然、放置されていた屹立を銜えられて、舌を絡められた。
「ぅあ……っいや、」
追い詰められ過ぎていて、堪える間もなかった。
思わず見開いた双眸に、してやったりと云わんばかりの夜右衛門の笑みが映る。
生暖かい咥内に擦られながらきつく吸われて、そのままあっさりと吐精させられてしまった。
初めて会った、この得体の知れない、明らかに性質の悪いであろう男の口の中で。
呆然とした。
「……っあ、てめ、なんてコト……しやがる。」
何事もなかったのかのように口の中のものを始末して、夜右衛門は微笑んでみせる。
「意表をつくというのは、大事ですね。」
「何が……大事……だ、」
あまりの出来事に二の句が継げない。堪えていればそのうち諦めてくれる可能性もあるかもしれないとか、カケラでも考えていた自分を殴り倒したくなった。最初から色々と問題だらけの相手ではあったが、初対面の相手の乳首をここまで弄んだ挙句、口の中に出させるような真似をしてくるとは考えもしなかった。
「大丈夫ですよ。貴方が私の望む通りに依頼を果たしてくれる限り、誰にも云いませんから。」
考えていることを読まれたように告げられる。
別の角度から弱みを握るにしても、あまりのされように、怒ったらいいのか叫んだらいいのか、解放されて頭は冴えてきたはずなのに、混乱でどうにもならない。
「頭おかしいだろ、てめぇ。」
ぐったりする。力が抜けた身体が鬱陶しい。
「先ほど善良では務まりませんと云いましたが、真っ当でも務まらないのが、処刑人一族の長ですよ。」
何を云っても無駄だということだけがよく判った。
「ですから、早く着ているものを戻してくれないと、続きをしたくなります。」
「――――っ!!」
冗談に聞こえないから恐ろしい。慌てて起きあがって乱れた着衣を元に戻した。
あらぬ行為の気配が残っていないかを念入りに確認し、腰に刺した木刀の位置をしっかり確認する。
「では依頼の方を、よろしくお願いします。」
「……出来ることなら二度と関わりたくねぇよ、おめーとは。」
「きちんと依頼を果たしてくだされば、報酬をお渡ししてそこで終わりですよ、きっと。あとは関わることもないでしょう。」
「本当に、そうならいいけどな。」
これまでの経緯を考えると、とても夜右衛門の云う言葉は信用する気にはなれない。
「ですが、お互い後ろ暗い事情を抱える身です。もし警察の取調べを受けるような事態に陥れば、私は貴方の乳首を弄んだ挙句にあらぬ処を口に銜えたままその中であらぬモノを出させ、その弱みにつけ込んで貴方に依頼を押しつけたことを白状しなければならなくなります。くれぐれも注意してください。」
「……マジで今この場で殺してやろうか?」
本気の殺意が芽生えた。
「冗談です。」
「だから冗談に聞こえねーんだっつーの。」
「何はともかく、快く引き受けてくださって嬉しいですよ。」
「おめーとは一生マトモな会話が出来る気がしねーよ。」
本当に二度と会いたくないと願って、銀時はさっさと池田家の屋敷から逃れることに決めた。
「個人的な希望を云うなら、」
「あ?」
「是非もう一度お会いして、ゆっくりお話をしたいですね。」
様々な含みをもつ笑みで云われる。
それには答えず、銀時は夜右衛門の笑みに背を向けた。
嘘ではない気配も感じるが、まるでそうはならないことを、知っているかのような云い方だった。
「よく云うぜ。」
本当に、タチの悪い死神に絡まれてしまった。あんなコトをされた直後に、平然を装って新八と神楽に会うのも気まずい。ロクでもないことが起こる予感しかしない。
「さあて、どうすっかな。」
頭を抱える。
面倒なことばかり、問題が山積みになってしまった。
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