SHORT STORY

back next MENU



――――――――――――――――――――
埋められない経験値の差が生み出す
     絶望的で絶対的な、力量差。
――――――――――――――――――――

「あっちぃ。」
 纏(まと)わりつく湿度。太陽はとうに沈んだ時刻だというのに、いつまでも下がらない室温。
「残暑とかもうウンザリなんだよコノヤロー。」
 ひたすら「暑い暑い」を繰り返すばかりで、一向に何の解決策も模索しようとしない万事屋の店主は、ひとり蒸し暑い部屋の中に取り残され、いつまでも終わらない鬱陶しい暑さに苦しめられていた。
 何処でもいい……エアコンのきいている涼しい場所へ避難してぇ……っ!!
 しかし、そのための資金は、既に一円たりとて残されていなかった。一階にあるスナックお登勢からも、金の無い奴はさっさと帰りな、と店を追い出されている。
「毎年のことだろうが。何で未だにエアコンのひとつも買えねーんだテメーん家は。」
 何故か、当然のように万事屋に居る真選組副長が、銀時の机に腰掛けながら、だらしなくソファの上に転がるこの店の主を見下ろしている。
 過去、諸事情により少々の間ではあるが、銀時と身体を入れ替えていた経験のある土方は、目の前の銀時の状態に本気で首を捻る。
 彼は『万事屋・坂田銀時』として此処で生活していた間も、しっかりと家賃を払い、従業員の給料を払い、更には十分な貯金が出来るだけの金額を稼ぎ出していた。万事屋としての仕事は、日々の真選組の激務で鍛えられた土方にとっては、そう難しいものではなかった。
 自分が万事屋として稼いだものであるにも関わらず、銀時の名義で残していった貯金もあるくらいだ。それも少ない額ではない。
 それなのにどうして、未だに、目の前の此のだらしのない男は、こうも金欠に苦しんでいるのか。
「何でエアコンのひとつも買っとかねーんだてめーは。何のために銀さんのこの貴重な身体を貸してやったと思ってんだよ。」
 土方に理不尽な文句がぶつけられた。
「ふざけんな。誰も貸してくれなんぞ頼んじゃいねー。貴重さで云ったら、俺の身体のほうがニートのテメーの身体よりよっぽど貴重に決まってんだろうが。」
「……なあ土方君。もう一回くらい、俺たちの身体、交換してみない?」
「ふざけんな。二度としねぇ。ぜってーにゴメンだ。」
「何でだよ。ちょっとの間だけ、またおめーが万事屋やって、ちゃちゃっと稼いで、俺の名義で貯金残してくれりゃイイだけの話じゃねーか。その間、俺は真選組の副長としてダラダラしながら、 ちょっとだけ真選組に自由を取り戻してくっからさ? 俺の身体、使い勝手は悪くなかっただろ?」
「最低な本音がものの見事にダダ漏れだな。毎日その鬱陶しい天パのセットしなきゃならんのが面倒で、テメーの身体の使い勝手なんぞ、最悪だったわ。」
「ふざけんな。それ云ったら俺だって、どんなにセットしても前髪がV字になるお前の頭が最悪だったわ。つーか、当然のように此処に居るけどな、お前、今は仕事中の時間じゃなかったっけ? 何でこんなトコで油売ってんの?」
「……昼間、チャイナと眼鏡が、夜はてめーを見捨てて恒道館に行くか、あの女と三人で外に飯を食いに行くんだ……って云ってたんだよ。」
「え、何。会ったの?」
「偶然だ。従業員にまで見捨てられるとは、大した社長だな?」
「うるせーよ。おめーが俺の身体ん中に居た時にもっとしっかり稼いでくれてりゃあ、こんな苦労してねぇ。」
「俺が万事屋やってた時の稼ぎは十分だっただろうが。」
「あんなんじゃ足りねーよ。ああ、屯所はよかったなぁ。ジミーとか、やたら目のキラキラした小姓とかがいつも傍にいてくれて、頼めば何でもしてくれんだぜ? 冷たい飲みモンとか一発で持って来てくれんだぜ? 何で俺は社長だってのに、こんなにも冷遇されなきゃなんねーんだ? 今日のこのクソ暑い最中、俺だけがひとりおいてけぼりを食らってるとか、酷すぎるねぇ?」
「テメェの普段がだらしねーからそうなるんだろ。自業自得じゃねーか。つーかいつまで寝転がってんだよ。さっさと灰皿出せやコラ。」
「亭主関白かっ!? 何で俺がオメーのためにいちいち灰皿を準備してやらなきゃならねーんだ!?」
 いつもはヘタレのくせに、稀にとんでもない俺様っぷりを発揮するニコチン中毒は、当然のように万事屋に置いてある自分専用の灰皿を催促した。
 ソファの上に身体を投げ出した銀時は、叫ぶ体力まではあったものの、身体を動かす気力まではなかったらしい。叫び終えるとまたソファの上にだらしなく身体を投げ出して天井を仰ぐ。
 一向に動く気配のない銀時に痺れをきらし、土方は灰皿の用意を待たず、煙草に火をつけた。
「…………ちゃんと自分で灰皿取りに行けよ。場所は判ってんだろ?」
「どんだけ動かねー気なんだよ。」
「……だから、そもそもお前は、此処に何しに来たんだよ。」
「あ? ンなコトいちいち聞くな。」
「――――――――っ!?」
 云うなり、土方は素早い動きで、銀時の股間を容赦なく握り締める。
「――っこの野郎!! 問答無用でソコを握りに来るんじゃねぇ!!」
「俺の時間が止まってた時に、テメーはチ○コでも握ってろっつったのはお前だろうが。」
「俺のをってことじゃねーわ!! 何で覚えてんだよ!? っつーか聞こえてたのかよアレ!?」
「しっかり聞こえてたわ。無意味に全力で人のことぶん殴りやがって。」
 土方は吸いさしの煙草を携帯灰皿に突っ込んで揉み消す。結局、せっかく万事屋に土方専用として常備されている灰皿は、出番がなかった。
「つーかホントにおめーはソレばっかりだな。ンなに俺の身体が好きなら、自分が中身だった時に指でも突っ込んでみりゃよかっただろうが。」
 そう云うと、土方は本気で厭そうに顔を顰める。
「何が楽しいんだンなことして。」
「いつもてめーが指突っ込んでる場所じゃねーか。やってみりゃ、ちったあされる側の気持ちがわかるでしょ? 俺が常日頃、どんだけしんどい思いをしてんのか、土方君にだってわかるでしょ?」
「わかってたまるか。俺はテメーが悶えてる姿を見んのが楽しくてヤってんだ。テメーの気持ちをわかる必要なんざひとつもねぇ。」
「サイッテーなセリフを吐いたな。」
「普段のテメー程は最低じゃねぇよ。第一、あんだけ色々と出してんだ。しんどいだけじゃねーだろうが。」
「…………っぐ、」
 土方が云う色々とは、涙やら汗やら、特定の器官から出てくる白かったり透明だったりする体液やらのことだ。終わるといつも、自分のものなのか相手のものなのか判らないそれらで自分の銀時の身体はぐちゃぐちゃになっている。
 その時の己の状態を思い返して、返す言葉に詰まってしまうと、土方は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「腹立つ笑いかたしやがって……っ!!」
 銀時の頚筋から汗が雫になって伝い、ソファに落ちていく。
「く……っそ。テメーの身体の時に、副長名義で借金でもして、エアコン買っとくべきだったわ。」
 動きもせずただ云いあっているだけだというのに、ふたりの額からはじわじわと汗が噴き出してくる。
「テメェのことだから、てっきりそんくらいのことはしてるかと思ったんだが、案外律儀だな。あの後、まさか一通も借金返済の督促がこねーとは思わなかったぞ。」
「…………暇がなかっただけだよ。」
 ぶっきらぼうに云い放つ銀時に、土方は再び、少しだけ唇の端をあげて、こみ上げる笑みをかみ殺す。我慢しなければ、だらしなくニヤついた表情になってしまうのを必死で抑えているのが、銀時からも判りやすい表情だった。
「嬉しそうにするんじゃねぇ。」
「まあいい。それよりも、これでようやく、俺は落ち着いてテメェに突っ込める。」
「……おい。」
 声に圧力を込めて制止しようとするが、土方は聞かない。
「……って、だからっ!! 問答無用で勝手に俺の身体を弄るんじゃねーよ。」
「仕事の合間に寄っただけなんだよ。ンなにゆっくりしてらんねーんだからしょうがねーだろ。」
「う……っわ、何ソレ。ヤりたいだけ? なんっつー最低な言い草だよオイ。」
「……ん? にしても、そっちの身体の使い勝手も悪かねぇが、やっぱり自分の身体が一番だな。」
「いやだから人の話を聞けよ!? それに、使い勝手ってどういうコトだ!? 何に使った!?」
「邪推すんな。別に変なコトになんぞ使っちゃいねぇ。男として処理すべき問題だけは普通に処理させてもらったが、ヘタなモンに突っ込んだり突っ込まれたりは断じてしてねーぞ。」
 土方は銀時の上に乗りながら、銀時の右のてのひらを指差す。
「ちゃんとこの手でしてやった。……ああ、けど、いつもするよりも、ちょっと時間がかかったな。」
「人のことを早漏みたいに云うんじゃねぇ!!」
「てめーは実際いつも早ぇだろうが。俺が擦ると直ぐに……、」
「黙れやあああああああ!!」
 羞恥心もあり本気で拳を振り上げる。
 当てるつもりで放った、そこそこに鋭い一撃だったが、土方には寸でのところで躱されてしまう。
「――――っと、危ねーな。つーか、ほぼニートのテメェの身体なんか使って、いったい何ができるってんだ。」
「それはそれで失礼な話だなオイ――――って、コラ!! 指突っ込もうとするんじゃねぇ!!」
「あぁ? 用意もなく直接ぶち込んだら、怪我すんのはそっちだろうが。」
「あああ!! だから!! そういう意味じゃねぇよ!! 会話が成り立たねぇええ……っ!!」
 ソファの上で土方に圧しかかられながら頭を抱える銀時に、土方は本気でお前は何が云いたいんだ……とでも云わんばかりの視線を向けた。
「暑苦しいからヤらねぇって云ってんだろ!? こちとらパチンコ負けたせいで金もなく食料もなく、こんなクソ暑い日を従業員にチクチク責められながら水道水とちょびっと残ったいちご牛乳だけで凌いだんだよ!! おめーにつきあう体力なんてこれっぽっちも残ってねーの!! 解る!?」
「俺だってテメーのその身体使ったことがあるから判るわ。その身体は、その程度のことでヤれねぇほど体力無くなったりなんぞしねぇ!!」
「テメーの為に使える体力なんか残ってねーって話をしてんだよ!!」
「なら確かめてやる。」
「――――――――っ!!」
 焦らしもへったくれもなく、荒い息遣いで、土方の動きは目的への最短距離を目指し始めた。
 男同士だ。その気持ちは勿論解らなくもないが、突っ込みたいだけの衝動をそうも露わにされると、複雑な気持ちにはなる。
 ……おめーはホント、そればっかりかよ――――とか思うのは、女々し過ぎるかね?
 土方が自分を挿し込むべき入り口に塗りたくった潤滑剤が、ぐちゃりと湿った音をたてる。中にも同じものが大量に注がれて、土方が窄みを緩めようと指を抜き挿しする度に、溢れて汗と混じりながら、肌を伝い落ちていく。
「……っく、あ、」
 本当に、も……ちょっと、コレ以外にはねーのかよ……?
 思いはするが、身体は勝手に覚えた刺激を悦んで、施される刺激に素直な反応を返していく。
 自分でするよりも、はるかにイイ。
 数少ない昔の記憶だが、女の身体を使うよりも、土方にされる行為のほうが、段違いに気持ちイイ。
「く……っそ、腹立つ……な。」
「何が……だよ。」
 土方を思い出して自分でするよりも、されるほうがとてつもなく気持ちイイ。中を穿たれる行為ならまだしも、前を擦られるだけの行為すら、この男の手のほうがイイ。
「ぜ……って、土方君に……だけは、教えて、やんない。」
 其のことだけは絶対に、この男には教えてやらない……と、心の中で、勝手に拳を固く握りしめて誓う。
「…………この身体を使ってみての、個人的な感想……なんだがな、」
「ん……あ?」
 土方が突如、行為とは関係の無い、真面目な表情を銀時に向けた。
「身体能力的には、ほとんど差はねぇ印象だった。」
「……ま、そうだろうな。俺だってダラダラしちゃいるけど、身体だけは鈍らせねぇようには気ぃつけてるし?」
「基本ダラダラしてばっかりじゃねーか。」
「たまに木刀振り回す程度のコトはしてっから……さ?」
「……程度かよ。腹立たしい野郎だな。延々こんな自堕落な生活してるくせに、テメェのバケモノ並みの強さはいったいどっから出てきやがんだ。」
「……――――ああ、」
 土方の言葉を聞いた瞬間、銀時は双眸を細めてニヤリと笑う。
「ザマーミロ。」
「嫌な表情で笑うんじゃねぇ。気持ちが削がれるだろうが。」
「ならもう止めちまえ。」
「誰が止めるか。」
「……っ、身体ひとつ使うにも、色々と……コツがあるんだよなぁ。」
「あぁ?」
「教えてほしい?」
「誰がいるか、ンなモン。」
「……っあ……く、――――っん、」
 肛内を押し広げていた土方の指が引き抜かれて、固く勃ち上がった生殖器の先端が、緩められた入り口の先端に当てられた。
「――――――――っあ!! ……っく……ぅあ!!」
 奥を目指して、一気に突きたてられる。
「ん……っふ、く……っうああ!!」
 中に根本まで埋めた屹立が、今度は雁首で内壁を擦るようにしながら、ギリギリまで引き抜かれて、浅く小刻みな動きを繰り返しながら再び奥を目指して侵入してくる。
「――――ぁう、……っあ、ん――――っう、」
 ――――気持ちイイ。
 奥の泣き処を土方の先端で擦られると、肌が勝手に粟立っていく。
 土方の指先がそっと肌を辿っている。
「ん……っ、く……待て、土方、」
「あん?」
「そ……こ、さわる……な、」
 固くなった乳首の先端に、土方の指先がふれようとしていた。
「……ンでだよ。」
 不機嫌そうな云いかたをされるが、土方が心の中ではほくそ笑んでいるのが判る。
「――――ぁん……っう、んぅ、」
 押し潰すようにしながら捏ねられると、其処から身体の芯に向かって、堪らない感覚が奔っていく。肛内に楔を打ち込まれて腰を固定された状態のままで、耐えられずに身を捩った。
「――――や……っ、く……っそ、」
 勝手に涙が溢れて、涙目になってしまう。
 肌を辿る指先の力加減。どうして其処とわかるのか、自分を焦らすタイミング。中を穿つ腰の動き。
 全部がいちいち、絶妙で気持ちイイ。
「……さっき、テメェで言っただろうが。身体の使いかたには、コツがあるんだよ。」
 考えていることを読んだかのように、土方が云った。
「初めてした時……から、自信満々で、まるで、人の身体のコト、判りきってる……みたいな、ヤりかたをしやがって。」
「どうすればテメーが追い詰められるのか、どうされるのが弱いのか、とっくに知ってるみたいな扱いかたをしやがって……か?」
「そ……んの、こういう……時だけ、自信満々の態度……が、腹立つ……っ!!」
「どっかの誰かさんと違って、プロ・アマ問わず、昔はモテてたからな。」
「――――っ!!」
「練習相手にゃ事欠かねーだろ。」
 プロ・アマ問わず……というのが、いかにも土方らしい。確かに此れだけの容貌で、目立つ欠点が味覚障害くらいなら、土方に近づきたい女は幾らでも居たことだろう。
 既に、『抱いた』よりも『抱かれた』回数のほうが圧倒的に多い自分では、どう足掻いても敵いようがない。
 これは、埋められない経験値の差が生み出す、絶望的で絶対的な、力量差だ。
「けど俺は、テメェとすんのがイイ。」
「……ああ?」
「ココ……、」
「――指で……さわんな……っ!!」
「いりぐち、きっつい……し、」
「――――っあ、」
「中身、ぐっちゃぐちゃで、」
 土方は愉しそうに云いながら、肛内に突き立てた屹立で中を掻き混ぜるようにしながら腰を動かす。
「……っく、う……っあ、」
「だらしねぇ顔して、」
「最中に、ベラベラ……喋る男は嫌われるって、知らねーの……かよ……っ、」
「俺が中身だったら、そうはならねぇな。」
「……っ喧嘩……売ってんなら買うぞコラ。」
「何でそうなんだよ。」
 自信満々の男前な笑みが、やたら愛おしそうな視線で自分を見つめている。
「てめぇがイイって云ってんじゃねーか。」
「ソレ……は、ぜってー、云って……ねー。」
「自分じゃ二度とセットしたくねえぇこの鬱陶しい天パも、」
「……っく、この……、」
「気ぃ抜くと締まりの無くなってく、そのみっともねぇツラも、」
「マジ……っで、殺す!!」
「ンなだらしねぇ顔で喘いでるくせにかよ?」
「誰……っが、」
「可愛いつってんだろうが。」
 まるで駄々をこねる子供に言い聞かせるようなやりかたで、土方は銀時の頤を掴まえて、唇を重ねる。
「てめーがイイんだ。」
 奥深くまで突っ込んだ状態のまま動きを止めて、確かめるように抱きしめられる。
 煙草の匂いが混じる、汗の匂い。
 犬みたいに、鬱陶しく懐いてくる、いい歳こいた男の、暑苦しい体格。
「重……い……って、」
「てめーだって同じようなモンだろうが。」
「暑苦しいんだよ。」
「そっちの天パほどじゃねぇ。」
「無駄に、ひっつくな。汗くせぇ。」
「厭がってねーだろうが。少しは大人しく抱かれてろ。」
 当たり前のように云われる。
 当然のように、俺が、土方のこの匂いを厭いじゃないことがバレている。
 抱き締められることで、落ち着いてしまうことも、バレてしまっている。
 言い訳しづらくてしかたない。
 言い包められても、厭じゃない。自信満々に「お前は俺が厭いじゃない」と云われても、反論できない。
 こんのクソ暑い最中に、大の大人の、それも筋肉質な男が絡みあってる状態なんてただひたすら鬱陶しいことこの上ない。
 張りつく肌も、汗の匂いも、圧しかかられる身体の重さも、何もかもが暑苦しい。
 口を開けば、直ぐに離れろと叫んでやりたい。
 それなのに、その全部に、心地よくされていく。
 腹立たしい。
 ――――だから、本気で腹が立つから、絶対に教えてやらない。
 自分ひとりで、心の中で、勝手に誓う。
 土方が戯言に混ぜて知りたがった、この身体の使いかた。
 体力も互角。
 筋力も互角。
 身体的に、土方が俺に劣る要素はない。
 取捨選択の容赦が無い、必要と判断すれば、切り捨てるという選択肢をとれる土方のほうが、自分よりも、もっと強くなれるかもしれない要素はある。
 それなのに生まれる、この、どうしようもない力量差。
 …………土方くんには云えないけれど、どうしようもないんだよね、コレ。
 自分が生きてきた環境。晒されてきた過去。其処で得てしまった、とてつもない数の、ロクでもない数多の経験。
 これは、埋められない経験値の差が生み出す、絶望的で絶対的な、力量差。
 だから、土方は、きっと俺には勝てない。
 あんな経験も、してほしくない。
 俺がおめーに勝てねぇコトがあんだから、おめーだって俺に勝てねーコトがあって、イイだろ?
「一生……、」
「あん?」
「おめーは、俺に敵わず、もがいてろ。」
 何のことか、直ぐには解らなかった土方が、眸を丸くして、自分を見つめる。
 少しだけ意識して、意地悪い笑みを浮かべて云ってやる。
「ざまーみろ。」
「…………ハナっから、俺がてめーに敵うなんざ、思っちゃいねーよ。」
「……っ!?」
 怒り出すかと思っていたのに、土方は諦めを含んだような男前の笑みで、優しくそっと口吻けを落としてきた。
「一生、俺の負けでいい。」
「――――っ!!」
 口でも絶対、負けないつもりだったのに。
 途端に土方の表情が『してやったり』の其れになるが、もう反論出来ない。
 予想外のとんでもない不意打ちは、一瞬にして、とんでもない威力で、俺を黙らせてしまった。





20140914 プリーズ!ギントキ 無料配布


back next MENU